自己紹介 - ドイツへ -

2012年9月1日、僕はチューリッヒへ向かう飛行機の中にいた。ドイツの最も南、ボーデン湖のほとりにあるEADS Astrium (現在のエアバス宇宙部門 Airbus Defence and Space)で、半年間のインターンに参加するためだ。初めてのインターン、初めての海外長期滞在、英語でのコミュニケーション、できる限りの準備はしたつもりだったが不安は尽きない。前年同じインターンに参加した先輩から引き継いだ"インターンのしおり"を機内で何度も見直した。

チューリッヒ国際空港では、Astriumからの迎えが待っていた。事前に聞いていたこととはいえ、学生に過ぎない自分に、迎えまでよこしてしまうAstriumのスケールの大きさに少し気後れする。空港から車で約一時間、スイスとドイツの国境を越えボーデン湖南岸にあるKonstanzへ。国境には確かにゲートがあるものの、シェンゲン協定がスイスでも施行されてからは、何のチェックもなく国境を行き来できるようになったそうだ。

ここからはフェリーで対岸の街Meersburgへと渡る。ボーデン湖は霧が出ることも多く、その日も対岸に近づいたころにようやく街の姿が見えてきた。Meersburgはボーデン湖畔の街の中でも特に中世の面影が強く残る街で、ブドウ畑に囲まれたワイナリー、古城、教会、小さな家々と、おとぎ話のような街が見えてきた時の感激は今でも覚えている。

f:id:uchu-engineer:20170716134519j:plainMeersburgの街から見たBodensee

僕が住む予定になっていたのは、Meersburgからほど近い街ImmenstaadにあるFerienwohnung、日本語に訳すならば休暇用アパートといったとこだろうか。ボーデン湖は泳ぐのはもちろん、ボートやヨットを楽しむ場所としてもメジャーで、夏には多くのバカンス客でにぎわうのだが、9月に入ると客足は一気に引き、Ferienwohnungもガラガラになる。そのため、この時期には、Astriumなど周辺にある会社への出張者などが比較的低価格で利用できるようになっている。

Ferienwohnungについたところで、迎えに来てくれたドライバーさんと別れ、インターンでお世話になるスーパーバイザーの秘書さんと合流。そこからは入居手続き、ドイツで初めての食事をして、スーパーで日用品や食品の購入、後日手続きで行く必要のある町役場や銀行それにAstriumの場所を確認。(何もかもサポートしてもらって、ホント至れり尽くせりである。)目まぐるしく街のあちこちをまわり、最後にボーデン湖を見晴らせる船着き場に来た頃にはあたりは真っ暗になっていた。湖は波もなく静かで、対岸の街明かりが淡く光っていた。この時は、まさか何年もドイツに住もうなどとは夢にも思っていなかったけれど、それまでに感じていたどんな不安も忘れて、"ああ、来てよかった"と思えるほどには、心動かされていた。